「スティーブン・キングのキャリーって、僕らが見るときには『超能力を持った女の子がいじめられっ子で最後に皆殺しにする話』だと思ってる。ブライアン・デ・パルマ版もそうですね。でもキング版のキャリーはもっと青春ストーリー。お母さんがカルト的なキリスト教信者で『お前は男の汚れた血で生まれてきた』と教えていて、生理が遅れて学校でみんなにタンポンを投げつけられていじめられるシーンから始まる。 キングがすごいのは、キャリーといじめてる子の両方に感情移入する。いじめてるグループも内部で『あんなにいじめていいの?』『やりすぎたんじゃない?』と分裂してくる。やりすぎたと思った女の子が『私はキャリーの友達になりたいけど、もうなれない』と思って、自分のボーイフレンドに『キャリーをプロムに誘ってあげて』と頼む。男の子は最初義務感で、ところが誘ってみるとキャリーが綺麗に見えてくる——その様子はキャリーの母親にとっては『過去に自分が犯した過ち(男と付き合ってキャリーを生んだ罪)が反復されてる』という地獄絵図。 『この女はついに他の男に色目を使うようになったのか、我が娘だというのに』と娘を閉じ込めようとする。一方、いじめっ子側はもっと向きになる——いじめが悪いことだと認めると今やってることも悪いことになるから、『もっと悪いことをしてキャリーを徹底的に落とさないと』。これが最後の豚の血をかける惨劇に繋がる。 キャリーがどれだけお母さんから自由になりたかったのか、普通の女の子になりたかったのか、クラスのみんなに飛び込みたかったのかを後ろから押してくるのが超能力。超能力はキャリーの救いでもあって呪いでもある。最後パーティー会場で何人か以外を全て皆殺しに、自分を含めてしてしまうキャリー——『善を成すためには大きな犠牲が発生する』というすごいテーマ。これがデビュー作なんですよ。書いた時、キングは10年間何書いても売れない教師時代で、奥さんに『これダメだろ』と言ったら『ちょっとこれ面白いわよ』と言われて出版社に出したら一発で通った。」
– 出典: YouTube『岡田斗司夫ゼミ』キャリー 解説(00:00〜)