「川村元気の本。これのカバーだけで2、3種類カバーが出てるなーで、まあ総論としては、小説なんだけど何かを書こうとしてちょっと書き切れなかった意欲作。一夫という元教師がすごい貧乏で苦しんでる、なんで貧乏かというと、人が良くて弟が借金を背負っちゃって、奥さんと娘が出ていってしまった——そんな奴が3億円の宝くじに当たるところから始まる。3億円もらって銀行で換金できたんだけど何をしていいかわかんない、いつも食べてる牛丼屋に行って大盛り頼んで卵と味噌汁、これがあんなに自分が欲しかったお金のある生活なのかと自問自答する。 主観の主観がすごい秀逸——シチュエーション自体としては貧乏人がいきなりお金を持つって話なんだけど、この主人公の主観でずっと話を続けていくから、今お金がないことのどんなに辛いかが、辛いというのは何かというと自分が辛いんじゃなくて、何かしてあげられないことが辛いっていうのがずっと支えていく。落語の『芝浜』のオチなんだけど、メインプロットだから伏線が貼りまくってある、勘の入りだったら『あ、これ芝浜なんだ』とどう段階で分かる。それは全然気にならない構造になってる。お金の本質とは何か——その回答を作者が書ききれてないので、お話全体がちょっと最後の方で横滑りするのが残念。でも十分面白い。」
– 出典: YouTube『岡田斗司夫ゼミ』億男 解説(09:05〜)